コラム記事

交通事故で認められる顔周辺(目・耳・鼻・口)の後遺障害

2020.04.23 顔(目・鼻・口)後遺障害

交通事故で傷害を負ってしまい、顔の周辺に後遺障害が残ってしまうことがあります。
後遺障害の認定基準の中で、顔周辺は、目(眼球、まぶた)、耳(内耳、耳介)、鼻、口(そしゃく及び言語の機能障害、歯)に分けられています。

これらは人間の身体の動きにとって極めて重要です。「文字がぼやけて見える」、「耳鳴りがするようになった」、「鼻での呼吸がしにくくなった」、「口を上手く動かせない」など、顔周辺の後遺障害は、日常生活や仕事に大きな影響を及ぼします。そのため、後遺障害の認定基準は非常に細かく規定されています。

今回は、交通事故の後遺障害等級として認められる顔周辺(目・耳・鼻・口)の障害について解説します。

目の後遺障害

交通事故による目の後遺障害は、眼球とまぶたに分けられています。
眼球の障害には、
(1)視力に関する障害
(2)目の調整機能に関する障害
(3)眼球の運動機能に関する障害
(4)視野に関する障害

まぶたの障害には、
(5)まぶたの欠損に関する障害
(6)まぶたの運動

があります。

視力に関する障害

交通事故によって視神経を損傷したり、眼球に外傷を負ってしまうことで、失明や視力の低下といった症状が生じることがあります。
視力に関する障害は、こういった失明または視力低下の状態で、第1級から第13級の後遺障害等級に認定される余地があります。失明の有無や低下した視力の程度に応じて後遺障害の等級が認められることになります。また、後遺障害等級の際に用いる視力とは、裸眼での視力ではなく矯正視力のことをさします。つまり、眼鏡やコンタクトレンズ等を用いた状態での視力が、認定の基準となります。
視力に関する後遺障害の等級の認定基準は、下記のように定められています。

眼の機能障害
該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)
認定基準
第1級1号 両眼が失明したもの
第2級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.02以下になったもの
第2級2号 両眼の視力が0.02以下になったもの
第3級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.06以下になったもの
第4級1号 両眼の視力が0.06以下になったもの
第5級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.1以下になったもの
第6級1号 両眼の視力が0.1以下になったもの
第7級1号 1眼が失明し、他眼の視力が0.6以下になったもの
第8級1号 1眼が失明し、又は1目の視力が0.02以下になったもの
第9級1号 両眼の視力が0.6以下になったもの
第9級2号 1眼の視力が0.06以下になったもの
第10級1号 1眼の視力が0.1以下になったもの
第13級1号 1眼の視力が0.6以下になったもの

 
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目の調整機能に関する障害

目には、物などを見る時、ピントを合わせる調整機能が備わっています。その調整機能は、水晶体が行っています。
交通事故により水晶体を摘出せざるを得なくなったり、傷ついてしまったことで、ピントが合わずに物がぼやけて見えるようになったなど目の調整機能が低下した場合には、後遺障害として認められる余地があります。
具体的には、下記の等級が定められています。

眼の調節機能に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第11級1号 両眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの
⇒具体的には
両眼の調節機能が正常な場合と比較して、2分の1以下になってしまった状態のことをいいます。
第12級1号 1眼の眼球に著しい調節機能障害を残すもの
⇒具体的には
1眼の調節機能が正常な場合と比較して、2分の1以下になってしまった状態のことをいいます。

 
しかし、目の調節機能は加齢によっても失われますので、55歳以上の方の場合、調整力を失っていたとしても、後遺障害として認定されないケースもあります。

 
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眼球の運動機能に関する障害

眼球の運動機能に関する障害には、物が二重に見える複視と、眼球を動かすことで直視することのできる範囲、注視野の範囲が狭くなる障害があります。

 
眼球の運動機能の後遺障害については、次のように定められています。

眼球の運動機能に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第10級2号 正面を見た場合に複視の症状を残すもの
第11級1号 両眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
第12級1号 1眼の眼球に著しい運動障害を残すもの
第13級2号 正面以外を見た場合に複視の症状を残すもの

 
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視野に関する障害

視野というのは、一点を見つめた際に見える広さをいいます。視野の障害には、半盲症視野狭窄視野変状があります。
視野に関する後遺障害については、次のように定められています。

視野に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第9級3号 両眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの
第13級3号 1眼に半盲症、視野狭窄又は視野変状を残すもの

 
半盲症とは
両眼がそれぞれ右半分ないし左半分しか見えないというレベルまで視野が狭まっている状態のことを言います。

 
視野狭窄とは
人の目に見える一定の範囲(視野)が狭まってしまうことをいいます。
視野狭窄には、「求心性狭窄」と「不規則狭窄」とがあります。
求心性狭窄は、視野の周辺部分から中心に向かって視野が狭まっていき、不規則狭窄の場合は、不規則に視野が狭まる状態を言います。

 
視野変状とは
半盲症や視野狭窄のほか、視野欠損や暗点が生じて視野の一部に見えない部分が発生することをいいます。「暗点」とは、強い光でも感知することができない絶対暗点のことを言います。

 
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まぶたの欠損に関する障害

交通事故により、まぶたの全部または一部が欠損した場合や、まつ毛がはげてしまった場合には、下記の表にしたがって後遺障害が認定されることになります。まぶたの欠損については、外貌醜状としても捉えることができるので、外貌醜状による後遺障害の等級と比較として、より上位の等級が認められることになります。

眼球の運動機能に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第9級4号 両眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第11級3号 1眼のまぶたに著しい欠損を残すもの
第13級4号 両眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの
第14級1号 1眼のまぶたの一部に欠損を残し、又はまつげはげを残すもの

 
「まぶたに著しい欠損を残すもの」とは、まぶたの欠損により角膜を完全に覆えない状態をいいます。また、「まぶたの一部に欠損を残すもの」とは、まぶたの一部により角膜を覆うことができるが、球結膜(しろめ)が露出してしまう状態をいいます。「まつげはげ」とは、まぶたの周囲に生えているまつ毛の2分の1以上がはげてしまった状態をいいます。

 
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耳の後遺障害

交通事故により(1)聴力障害が生じたり、(2)耳介(じかい)の欠損、(3)耳鳴り、(4)耳漏(じろう)が残ってしまう場合などには、耳に後遺障害が残ってしまうことがあります。また、耳の三半規管や耳石は平衡感覚をつかさどっているため、平衡機能に障害が生じることもあります。

聴力障害

交通事故によって聴力が低下したり、喪失してしまう聴力障害は、第4級から第14級の後遺障害等級に認定される余地があります。
聴力に関する後遺障害は、両耳と片耳の聴力に関して、その聴力低下の程度に応じて各等級が定められています。

両耳の聴力に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第4級3号 両耳の聴力を全く失ったもの
第6級3号 両耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第6級4号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第7級2号 両耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
第7級3号 1耳の聴力を全く失い、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
第9級7号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することができない程度になったもの
第9級8号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になり、他耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
第10級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では普通の話し声を解することが困難である程度になったもの
第11級5号 両耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの
耳の聴力に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第9級9号 1耳の聴力を全く失ったもの
第10級6号 1耳の聴力が耳に接しなければ大声を解することができない程度になったもの
第11級6号 1耳の聴力が40センチメートル以上の距離では普通の話声を解することができない程度になったもの
第14級3号 1耳の聴力が1メートル以上の距離では小声を解することができない程度になったもの

 
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耳殻(じかく)の欠損

耳殻は耳介(じかい)とも呼ばれます。後遺障害として認定されるのは、1耳の耳殻の大部分を欠損した場合です。大部分の欠損とは、耳殻の軟骨部分の2分の1以上を欠損したことをいい、第12級4号に該当することになります。両耳とも、大部分の欠損にあたる場合には、併合により第11級の後遺障害が認定されることになります。
耳の欠損が外貌醜状と判断されれば、第7級から第12級の後遺障害等級に該当する可能性があります。

耳殻の欠損に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第12級4号 1耳の耳殻の大部分を欠損したもの

 
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耳鳴り

交通事故の影響で耳鳴りの症状が残った場合は、第12級相当または第14級相当の後遺障害等級に認定される可能性がありますが、ただし、難聴を伴う場合に限られます。
耳鳴りの程度によって下記の表のように判断します。

耳鳴りに関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第12級相当 30dB以上の難聴をともない、著しい耳鳴りを常時残すことが他覚的検査により立証可能なもの
第14級相当 30dB以上の難聴をともない、常時耳鳴りがあることが合理的に説明できるもの

 
ここでいう「著しい耳鳴り」とは、上述の検査などで耳鳴りが存在することが認められていることを医学的に評価できることをいい、「常時耳鳴り」とは、昼間は自覚症状がなくても夜間に自覚症状が生じる場合も「常時」にあたるとされています。

 
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耳漏(じろう)

耳漏とは、鼓膜に穴が開き、そこから液が垂れてくる状態のことです。
まずは、手術により治療をしたうえで、まだ耳漏があり、30dB以上の難聴を伴う場合には、後遺障害と認定されます。

耳漏に関する障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第12級相当 30dB以上の難聴で、常時耳漏を残すもの
第14級相当 30dB以上の難聴で、耳漏を残すもの

 
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鼻の後遺障害

鼻の後遺障害には、(1)嗅覚、(2)鼻呼吸、(3)鼻の欠損があります。

嗅覚の障害、鼻呼吸の障害

嗅覚を失った状態(嗅覚脱失)や、鼻呼吸が困難な場合には、第12級の後遺障害等級に認定されます。また、嗅覚が衰えた状態(嗅覚減退)では、第14級の後遺障害等級に認定される可能性があります。

鼻の欠損

鼻の欠損は第9級の後遺障害等級に認定される可能性があります。鼻の欠損が外貌醜状に当たる場合は第7級から第12級に認定される可能性もあります。

鼻の機能障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第9級5号 鼻を欠損し、その機能に著しい障害を残すもの
第12級相当 嗅覚脱失または鼻呼吸困難
第14級相当 嗅覚減退

 
※鼻の欠損・・・鼻軟骨部の全部または大部分の欠損のこと。
※鼻の機能に著しい障害を残すもの・・・鼻呼吸困難または嗅覚脱失のこと。

 
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口の後遺障害

口の後遺障害には、(1)咀嚼や言語の機能障害、(2)味覚障害、(3)歯牙障害の3つがあります。

咀嚼や言語の機能障害

咀嚼(食べ物を噛んで消化を助ける機能)や言語機能(言葉を発声する機能・4種類の語音を発声する機能)の障害は、第1級から第10級の後遺障害等級に認定される可能性があります。流動食以外食べられない状態などが第1級に該当します。

咀嚼や言語の機能障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第1級2号 咀嚼及び言語の機能を廃したもの
⇒流動食以外は食べられない状態、および4種の語音のうち3種以上の発音ができなくなってしまった場合。
第3級2号 咀嚼又は言語の機能を廃したもの
⇒流動食以外は食べられない状態、または4種の語音のうち3種以上の発音ができなくなってしまった場合。
第4級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
以下の両方を満たす場合
(1)粥食またはこれと同様の食事以外ができない状態
(2)4種の語音のうち2種の発音が不能のもの、または綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができない
第6級2号 咀嚼及び言語の機能に著しい障害を残すもの
以下のどちらかを満たす場合
(1)粥食またはこれと同様の食事以外ができない状態
(2)4種の語音のうち2種の発音が不能のもの、または綴音機能に障害があるため、言語のみを用いては意思を疎通することができない
第9級6号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
以下の両方を満たす場合
(1)固形食物の中に咀嚼ができないものがあること、または咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できること
(2)4種の語音のうち1種の発音が不能のもの
第10級3号 咀嚼及び言語の機能に障害を残すもの
以下のどちらかを満たす場合
(1)固形食物の中に咀嚼ができないものがあること、または咀嚼が十分にできないものがあり、そのことが医学的に確認できること
(2)4種の語音のうち1種の発音が不能のもの

 
4種類の語音について

言語機能の後遺障害は、言語の音にあたる4種類の語音が発声できるかどうかで区別されます。以下が4種類の語音になります。

・口唇音(こうしんおん)…ま行音、ぱ行音、ば行音、わ行音、ふ
・歯舌音(しぜつおん) …な行音、た行音、だ行音、ら行音、さ行音、しゅ、し、ざ行音、じゅ
・口蓋音(こうがいおん)…か行音、が行音、や行音、ひ、にゅ、ぎゅ、ん
・喉頭音(こうとうおん)…は行音

 
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味覚障害

交通事故によって頭部外傷やその他舌や顎の組織が損傷してしまうことが原因で、味覚が失われる(味覚脱失)、味覚が減退する(味覚減退)などの機能障害が残ってしまうことがあります。その場合、味覚脱失は第12級相当、味覚減退は第14級相当の後遺障害等級に認定される可能性があります。

味覚の障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第12級相当 味覚を脱失したもの
⇒甘味・塩味・酸味・苦味の4つの基本の味のすべてがわからない場合をいいます。
第14級相当 味覚を減退したもの
⇒甘味・塩味・酸味・苦味の4つの基本の味のうち、ひとつ以上の味がわからない場合をいいます。

 
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歯牙(しが)障害

歯を失ってしまった状態のことを歯牙といいます。失った歯の本数によって異なる後遺障害等級に認定されます。

歯牙の障害

該当する等級
(自賠責施行令 別表第二)

認定基準
第10級4号 14歯以上に対し歯科補綴(ほてつ)を加えたもの
第11級4号 10歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第12級3号 7歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第13級5号 5歯以上に対し歯科補綴を加えたもの
第14級2号 3歯以上に対し歯科補綴を加えたもの

 
歯科補綴(しかほてつ)を加えたものとは、現実に喪失または著しく欠損した歯に対する補綴をいいます。

 
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顔周辺の後遺障害は非常に複雑なため、適切な後遺障害等級を獲得するためには、弁護士にご相談することをお勧めいたします。
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