コラム記事

脊髄損傷について

2014.12.31 脊髄損傷

脊髄とは、脳から背骨の中を通って伸びている太い棒状の神経線維の束です(小脳から腰椎に伸びる中枢神経)。交通事故による強い衝撃で、脊椎(いわゆる背骨)が骨折した結果、脊髄が損傷し、または脊髄が大きくたわんだ結果、背骨は折れなくとも脊髄の中心が損傷することがあります。

脊髄は、脳と体全体を結ぶ命令や感覚等の伝達経路ですので、脊髄損傷を生じると、損傷の部位・程度に応じて以下のような症状が現れます。

・呼吸筋の麻痺
・重度のめまい
・四肢麻痺、体幹保持の困難
・筋力低下と関節拘縮
・排尿・排便機能障害(尿意・便意の消失等)

麻痺の程度にも大きく分けて2つの分類があります。

完全麻痺 下肢がまったく動かず感覚もなくなった状態のこと。全く何も感じないわけではなく、受傷した部分から下の麻痺した部分にかけて、痛みを感じることもある。頚椎を損傷した場合には、四肢全てが動かないという状態になる。
不完全麻痺 脊髄の一部が損傷して一部が麻痺をしている状態のこと。ある程度運動機能が残っている軽症から感覚知覚機能だけ残った重症なものもある。

脊髄は、一度損傷してしまうと回復はほぼ不可能と言われています。そして、脊髄損傷による症状は上記のように重たいものばかりです。自力での生活はもちろん少し体を動かすことすらままなりません。

生涯介護を受け続けなければ生活を維持することが困難な重度障害(特に四肢麻痺)においては、被害者のご家族等の付きっ切りの介護や、職業付添い人の介護などが必要となりますが、その精神的・肉体的・経済的負担は非常に重いものとなります。介護施設への入所も、入所先がなかなか見つからないケースが散見されます。

そういった被害者の方及びご家族にとっては、仕事を失ったことによる収入の喪失や、介護による肉体的・精神的・経済的負担から、将来に大きな不安をお持ちにならざるをえないでしょう。その不安を少しでも取り除くためには、適切な損害賠償金を獲得する必要があります。

しかし、適切な損害賠償金を獲得するには、脊髄損傷の内容・程度に応じた後遺障害等級の認定を受けるだけでなく、今後要する費用(介護費用や自宅改造費用等)を立証するための資料を的確に収集し、立証していく必要があります。脊髄損傷を負われた交通事故被害者の方やそのご家族は、生活の安定を得るうえで、弁護士へご相談されることをお勧めします。

後遺障害等級認定のポイント

適正な後遺障害の等級認定は、CTやMRIによる画像所見で裏付けることができることのほか、神経学的検査所見(他覚的所見をとるための検査)の中でも客観性の高い検査所見を取得する必要があります。

脊髄損傷がMRIのT2強調画像上、高輝度で確認できないものは、自賠責保険における後遺障害が認定されにくいです。受傷直後のMRIの場合は、MRIのT2強調画像で高輝度が認められる可能性がありますが、慢性期に入ってしまうとT1強調画像で軟化型損傷の所見をとってもらう必要があります。

脊髄は円柱状であるため、画像の撮影角度や方法によって画像所見を得ることができる場合もあり、注意点の一つです。MRIの機械も通常の0.5ステラでは画像に症状が表れないが、3ステラであれば画像に写るという場合もあります。
これら必要な資料を整えたうえで後遺障害の等級認定を得る手続きをしなければなりません。

中心性頸髄損傷は、MRI画像所見が低輝度の場合にも診断されることがある病名です。高輝度の画像所見が得られない限り、医学的に証明可能な程度の他覚的所見が取れたということにならない(つまり、むち打ちと同じ扱い)ので注意が必要です。

以上のように、自賠責保険に対し、脊髄損傷を医学的に立証するには、それに耐えうる適切な画像とその所見を収集する必要があり、知識・経験が必要となります。適正な後遺障害等級を獲得するためにも、交通事故問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

賠償金獲得に向けた示談交渉や裁判におけるポイント

後遺障害等級が認定されただけでは山の途中です。示談交渉や裁判で将来不安を抱かずに済むだけの賠償金を獲得できるかが次の大きな山場になります。重度の脊髄損傷の場合は、最も高額になる費目が介護費用です。

そのため、介護費用をどれだけ獲得できるかは、被害者の方及び家族の方々の今後の生活の質を維持する上でも大変重要です。介護費用についての立証によっては、賠償額が数千万円単位で異なることもあります。しかし、将来に不安を抱かずに済むだけの介護費用を獲得するには、どういった介護を選択するか、なぜその介護である必要があるのか、後遺障害の内容や程度はどういったものかなど、多岐に渡るポイントについて十分な戦略を練り、詳細な主張・立証をしなければ、獲得できる賠償額は不十分なものとなってしまいます。

詳細な主張・立証をし、適正な賠償金を獲得するためにも、交通事故問題に詳しい弁護士にご相談されることをお勧めします。

脊髄損傷の後遺障害等級

後遺障害等級 後遺障害内容
別表Ⅰ(要介護)
1級 ・高度の四肢麻痺が認められるもの・高度の対麻痺が認められるもの
・中程度の四肢麻痺があり、食事、入浴、用便、更衣について常時介護を要するもの
・中程度の対麻痺があり、食事、入浴、用便、更衣について常時介護を要するもの
・高度の片麻痺があり、食事、入浴、用便、更衣について常時介護を要するもの
2級 ・中等度の四肢麻痺が認められるもの
・軽度の四肢麻痺があり、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
・中等度の対麻痺があり、食事・入浴・用便・更衣等について随時介護を要するもの
別表Ⅱ
3級 ・軽度の四肢麻痺が認められるもの
・中等度の対麻痺が認められるもの
5級 ・軽度の対麻痺が認められるもの
・一下肢の高度の単麻痺が認められもの
7級 ・一下肢の中等度の単麻痺が認められるもの
9級 ・一下肢の軽度の単麻痺が認められるもの
12級 ・運動性、支持性、巧緻性及び速度についての支障がほとんど認められない程度の軽微な麻痺を残すもの、また、運動障害は認められないものの、広範囲にわたる感覚障害が認められるもの
・運動障害は伴わないものの、感覚障害が概ね一下肢に渡って認められるもの

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