コラム記事

生殖器の後遺障害について

2015.06.19 後遺障害

交通事故の被害に遭い、不幸にも生殖器への後遺障害が残存してしまわれた方は、いったいどのような補償を受けることができるのでしょうか。まず、自賠責保険では、以下のような場合に後遺障害として等級が認定されます。

生殖器への後遺障害に関する後遺障害等級表

後遺障害等級 後遺障害の程度・内容
7級13号 【男性】
・両側の睾丸を失ったもの・常態として精液中に精子が存在しないもの
【女性】
・両側の卵巣を失ったもの
・常態として卵子が形成されないもの
9級17号 【男性】
・陰茎の大部分を欠損したもの・勃起障害を残すもの・射精障害を残すもの
【女性】
・膣口狭窄を残すもの
・両側の卵管の閉鎖または癒着を残すもの→画像所見により認められる必要がある
・子宮頸管に閉鎖を残すものまたは子宮を失ったもの→画像所見により認められる必要がある
11級10号 【女性】
・狭骨盤または比較的狭骨盤が認められるもの
13級11号 【男性】
・一側の睾丸を失ったもの
【女性】
・一側の卵巣を失ったもの

交通事故により生殖器に後遺障害を残した場合に受けられる補償は?

交通事故の被害に遭い、不幸にも生殖器への後遺障害が残存してしまわれた方は、いったいどのような補償を受けることができるのでしょうか。自賠責保険では、以下のような場合に後遺障害として等級が認定されます。(上記表を参照)

陰茎の大部分を欠損したもの

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

勃起障害

以下のすべてに該当するもの
・夜間睡眠時に十分な勃起が認められないことがリジスキャンによる夜間陰茎勃起検査により証明されること
・支配神経の損傷等勃起障害の原因となりうる所見が会陰部の知覚、肛門括約筋のトーヌス・自律収縮、肛門反射及び球海綿反射筋反射に係る検査又はプロスタグランジンE1海綿体注射による各種検査のいずれかにより認められること

射精障害

以下のいずれかに該当するもの
・尿道又は射精管が断裂していること
・両側の下腹神経の断裂による当該神経の機能が失われていること
・膀胱頚部の機能が失われていること

一側の睾丸を失ったもの

一側の睾丸の亡失に準ずべき程度の委縮も含まれます。

膣口狭窄

陰茎を膣に挿入することができないと認められるもの

狭骨盤

産科的真結合線が9.5㎝未満、または入口部横径が10.5㎝未満のもの

比較的狭骨盤

産科的真結合線が10.5㎝未満、また入口部横径が11.5㎝未満のもの

具体的な補償額は?

交通事故により後遺障害が残存した場合、後遺障害の部位・内容に応じて、通常、後遺障害慰謝料と後遺障害逸失利益という費目の支払いを受けることができます。

後遺傷害慰謝料の具体的な金額ですが、7級は1000万円(裁判基準)、9級は690万円(裁判基準)、11級は420万円、13級は180万円です。

しかし、後遺障害逸失利益という費目は、後遺障害の影響により今後見込まれる減収に対する補償であるため、減収が想定できない後遺障害が残存した分については、この費目による支払を受けることができません。

そして、生殖器への後遺障害が残存しても、通常は減収にはならないでしょう。では、裁判所における実際の判断はどうなっているのでしょうか。

生殖器への後遺障害が残存した場合の裁判所における判断

大阪地判平成22年5月17日

判決文より抜粋

原告は、生殖機能障害にかかる後遺障害が労働能力に影響すると主張するが、これを認める根拠に乏しく、これを認めるに足りる的確な証拠もない。

(中略)

原告は、生殖能力に関する後遺障害と生殖機能障害以外の後遺障害が併合されて後遺障害等級別表併合第8級の認定を受けたこと、原告が若年にして生殖能力に著しい障害を負い、通常の方法で子を設ける可能性がなく、婚姻の際の障害となり、通常の性生活を営む機会を奪われたこと等を考慮し、もとより、原告の後遺障害に関する精神的苦痛を金銭に評価することは困難ではあるものの、原告主張のような後遺障害慰謝料の金額を民事交通訴訟において認めることは困難であり、後遺障害慰謝料としては、730万円が相当であると認める。

なお、原告の生殖機能障害以外の後遺障害に対しては、後遺障害等級別表併合第11級との認定がされており、これに対する後遺障害慰謝料だけであれば、340万円が相当である。

大阪地判平成5年1月20日

判決文より抜粋

原告の現在の症状、とくに、これまでの人工授精の経過に照らせば、今後授精の可能性は乏しく、閉塞性無精子症、両側精液瘤による不妊を後遺障害と認定すべきことになる。

(中略)

3 入通院及び後遺症慰謝料(1500万円) 600万円

本件事故による原告の傷害の部位、程度、入通院期間、原告の後遺障害の程度(今後子供に恵まれる可能性の乏しいこと)等を総合勘案すると慰謝料としては600万円が相当である。

裁判例に対する弁護士のコメント

交通事故の被害により生殖器へ後遺障害を残した事案は、件数自体が少ないため、裁判例の数自体も少ないので一概には言えないのですが、上記裁判例を見る限り、裁判所では、生殖器への後遺障害が残存しても減収にはならないから後遺障害逸失利益は補償されないという、厳密で厳しい判断がされているといえます。

ただ、生殖器への後遺障害が残存した場合、他にも重い後遺障害を合併しているケースも多いと思われます。その分の後遺障害については、減収に対する補償は受けることができます。また、減収がない後遺障害の場合、同等の後遺障害等級が認定された場合に支払いを受けることができる後遺障害慰謝料と比較して増額される傾向にあります。

よって、生殖器への後遺障害を残存してしまわれた交通事故被害者の方による相手方との争い方としては、後遺障害慰謝料をきっちり増額させるという戦略で戦い、できる限り多くの補償を受けるということが重要であると言えます。

生殖器への後遺障害が残ってしまわれた交通事故被害者で、相手損保との交渉・裁判についてお悩みの方がいらっしゃいましたら、まずはご相談ください。

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