コラム記事

入院・通院時の損害賠償

2014.12.31 損害賠償休業損害

交通事故によって受傷し、入・通院に関連して加害者へ請求できる可能性のある主な費目は、以下のとおりです。

・治療関係費
・付添費用
・通院交通費
・休業損害
・傷害慰謝料(入・通院に対する慰謝料)

ここでは、入・通院に関連して発生する主な損害賠償費目について、ご説明します。 

治療関係費

治療関係費としては、入院費手術費通院治療費が挙げられます。

これらの費用は、原則として医学的に症状固定と判断された時まで、必要かつ相当な範囲で実費の請求ができます。必要性、相当性が認められない過剰診療や高額診療は請求できない場合があります。 

相手方保険会社は、3ヶ月、6ヶ月のタイミングで治療費の内払いを打ち切るケースがよくあります。まだ症状があり、治療を続けたい場合は、 治療費を打ち切らせないような対処法、打ち切られた後も治療を続け、立て替えた治療費をできるかぎり回収する方法などがありますので、弁護士に相談されるとよいでしょう。

交通事故の治療でも健康保険証を提示することで健康保険制度が利用できます。治療費の負担を軽減するうえでは利用を検討すべき場合が考えられます。

温泉治療費や入院中の特別室の使用料が請求できる場合もありますが、医師の明確な指示があり、治療上有効かつ必要なケースや、特別な事情(他の空室ない、重症事案等)がなければ認められない傾向にあります。また、認められたとしても総額のうち部分的に認められるケースが多いです。

症状固定後の治療費や、将来の手術費・治療費等は、否定的に考えられている場合が多いですが、症状の内容によって、または重症事案では認められる場合があります。

例えば、左大腿骨骨頭部骨折後の人工骨頭置換について、人工骨頭の耐用年数(15年)から3回の手術が将来的に必要となるとして、将来手術費が認められた裁判例(さいたま地判H23.11.18)があります。

付添費

原則として医学的に症状固定と判断された時まで、医師の指示があり、または受傷の程度、被害者の年齢等により、請求できる場合があります。幼児、重症事案の場合には請求が認められやすい傾向にあります。

通院交通費

原則として医学的に症状固定と判断された時まで、電車、バス等の公共交通機関の利用料または、自家用車を利用した場合のガソリン代が請求できます。

駐車場代、高速道路利用代も請求対象になりえます。なお、ガソリン代は、現状1km15円換算です。タクシー代については、症状の内容、程度によります。

休業損害

交通事故の被害者が受傷により休業したことで、現実に収入が減少した分が請求対象になります。また、現実の減収がなくとも、入通院のために有給休暇を利用した場合は、有給分が請求対象になります。会社員の場合は、勤務先から休業損害証明書を発行してもらい、請求することになります。

しかし、主婦(兼業主婦も含む)、事業所得者、会社役員の場合は、受傷の内容、程度、入通院期間、入通院実日数、その他個別の事情等によって何をどこまで休業損害として請求できるか、非常に難しい法律問題になります。

主婦の場合

けがや入通院が家事労働にどの程度不便になったかは、毎日コツコツと記録していなければ、はっきりしないところでしょうし、明確に立証しようとしても、客観的な証拠がカルテくらいしかありません。カルテには家事にどれほど不便があったかはほとんど記載されていないのが通常です。交渉の仕方や立証の仕方にノウハウが必要といえます

事業所得者の場合

収入に波があるので、どこからどこまでがけがや入通院を原因としているのか、客観的に立証するのは難しい問題です。事故直前の確定申告書だけでなく、実際の収入減を収入の波から推測できる手がかりを的確に収集・分析し、ポイントをついた主張・立証が必要です。

会社役員の場合

役員という立場にあることで得ている収入があるとの理解のもとに、裁判が運用されているので、会社の規模や業務内容、会社の個別事情を的確に主張・立証していく必要があります。

このように、これらの方々の休業損害は、示談交渉や裁判実務の知識・経験により大きな差が出る場面ですので、弁護士にご相談されるとよいでしょう。弁護士としても腕の見せどころではあります。

けがによる治療のための入・通院に対する慰謝料

けがによる治療のための入・通院に対する慰謝料は、傷害慰謝料と定義されています。

傷害慰謝料は、事故でけがを負ったことによる精神的苦痛や、入・通院によって体や時間の自由が奪われることによる精神的苦痛など、事故によって負ったけがに関連するさまざまな精神的苦痛を金銭的に補うための賠償費目です

精神的苦痛の度合いは、受傷の内容・程度や個々人によって異なるところですが、日常的に発生する交通事故の各被害者の正確な精神的苦痛の度合いを測定して金銭的に評価することは、事実上不可能と言わざるを得ません。

そのため、入院や通院の期間、実際に通った日数、他覚症状が乏しいけが(むち打ちなど)か否かによって、一律の算定基準が設けられています。この基準で保険会社や裁判の実務は運用されています。

しかし、この傷害慰謝料の計算でも、自賠責基準・任意保険の基準・裁判基準の3つの基準が存在し、どの基準で算定するかによって金額に大きな差が生じます。


例として、算定期間をみていきましょう。

ケース1:自賠責基準】

実際に治療を受けた日数の2倍、または全治療期間日数のいずれか少ない方の日数を基準として算定。

ケース2:裁判基準】

実際に治療を受けた日数の3倍、または全治療期間日数のいずれか少ない方の日数を基準として算定。

相手方保険会社は、被害者ご自身が交渉する場合、提示額を裁判基準に近づけようとしません。被害者ご自身では裁判にされる可能性が低いためです。

これに対し弁護士が交渉した場合、裁判により、裁判基準の賠償額が認定される可能性が高いため、相手方保険会社としても提示額を裁判基準に近づけていく努力をします。傷害慰謝料だけで考えてみても、弁護士が交渉すれば賠償額を増額できる可能性が高いといえます。

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