GCSについて

GCS(グラスゴー・コーマ・スケール:Glasgow Coma Scale)とは,頭部外傷の重症度を表す代表的な尺度です。

意識は,清明度(覚醒度,量的意識)とその具体的内容(認識,思考,判断,記憶など質的意識)に大別され,意識障害は両面から判定されます。

意識障害は脳組織が不可逆的損傷になる以前に迅速な治療が求められるので,客観的に判定されることが重要であるとされております。

日本では,JCS(ジャパン・コーマ・スケール:Japan Coma Scale)とGCSが多用されており,開閉眼状態,自発運動の有無,刺激に対する反応などから,客観的な量的意識レベルが経時的に把握されております。

 

意識清明度の維持は脳幹網様体と視床下部が主に担っております。脳幹網様体は延髄から中脳にかけての脳幹被蓋正中部にある神経細胞と繊維網が入り組んだ構造であり上行性網様体賦活系として機能し,意識の維持にあたっております。網様体の外側部細胞には知覚繊維が入力し,内側部細胞は上下方向に繊維を出力しております。脳幹網様体は視床を経て皮質連合野に広く投射します。視床下部では意識賦活系と抑制系があり,両者のバランスで覚醒・睡眠のリズムが保たれております。一方,意識内容は大脳半球が主に関与しております。意識障害は脳幹障害,両側間脳障害,大脳半球の広範な障害のいずれか,またはこれらの病変が混在した場合に生じます。

意識障害は,意識中枢の一時的損傷のほかに脳ヘルニアなどの周囲脳からの圧迫,局所血流量の低下による酸素やブドウ糖のエネルギー源が不足した場合,二次的にも生じます。

 

日本ではJCSという尺度の方が普及しておりますが,世界的にはGCSが用いられており,日本でも,主としてGCSを用いる医療機関が増えてきました。

 

GCSは,以下の表のとおり,開眼反応,最良言語反応,最良運動反応の3つの項目E+V+Mの合計点で評価され,合計点の範囲は3~15点となります。

一般的にはGCSスコア3~8点を重症,9~13点を中等症,14~15点を軽症と定義されております。

つまり,GCSスコアが低いほど重症です。

 

GCSスコア表

反 応 評 点
開眼(E)

Eye opening

自発的に開眼する
呼びかけにより開眼する
痛み刺激により開眼する
全く開眼しない
最良言語反応(V)

Best verbal Response

見当識あり
混乱した会話
混乱した言葉
理解不明の音声
全くなし
最良運動反応(M)

Best motor response

命令に従う
疼痛部へ
逃避する
異常屈曲
伸展する
全くなし