(2)適切な医証が取得できなかった場合の不利益 ~むち打ちの場合
一例として、最も相談の多い「むちうち」を例に挙げます。
・半年ほど通院し、後遺症が残っており、首が痛い状況です。
・手腕にもしびれや痛み、ぼうっとした感じの感覚の鈍さがあります。
・頭痛もあり、肩も重く、張っています。
・背中にも痛みや張りがあります。
このような重い自覚症状がある状況でも、適切な医証が取得できていなければ、最下級の等級である14級の後遺障害等級も認定されず、非該当と判断されます。
非該当と判断された場合に獲得できる賠償金額と、14級の後遺障害等級を獲得できた主婦の方、または年収350万円程度の方が手にすることのできる賠償金額とを比較してみましょう。
非該当の方 | 14級の方 | |
通院慰謝料 | 最大で約90万円 | 約90万円 |
後遺傷害慰謝料 | 0円 | 110万円 |
後遺障害逸失利益 | 0円 | 約80万円 |
合計 | 最大で約90万円 | 約280万円 |
この比較は、どちらも弁護士が入って最後まで粘り強く交渉または裁判までした場合の比較です。
双方比較して約190万円の開きがあります。14級が認定された場合、非該当の場合と比べ、通院慰謝料や、主婦の方であれば休業損害も、多額が認められやすい傾向にあります。また、年収は350万円程度を基準にしての計算ですので、年収が多ければさらに多額の後遺障害逸失利益が認められます。
非該当の場合、弁護士へ依頼すると費用倒れになってしまうので、弁護士特約に入っていなければ弁護士へは依頼しないという方も多いことでしょうから、その場合の獲得額は大幅に下がります。
したがって、実際の開きはもっと大きいと思われます。裁判をすれば裁判官は分かってくれると信じている方もおられるかもしれません。
しかし、適切な医証がなければ立証ができませんので、裁判官は分かってくれません。自賠責保険が後遺障害等級を認定していないケースにおいて、裁判官が独自の判断で後遺障害等級を認定するケースは、極めて例外的です。
症状固定後は治療費もご自身の負担になります。症状固定後も不安なく納得するまで治療を試みたいと思われる方にとっての今後の補償として、この差額は大きいのではないでしょうか。
実は、「むちうち」は医学的にも賠償法的にもとても難しい分野です。なぜなら、明確な所見が取れないことが多いため、効果的な治療方法も少なく、その傷病の立証も難しいからです。
医療分野に関する研鑽を積んだ弁護士として
1 適切な後遺障害等級の認定を受けるためのたった1つの重要ポイント
(1)とにかく症状に見合った適切な医証を取得する必要があります。
(2)適切な医証が取得できなかった場合の不利益 ~むち打ちの場合
(3)適切な医証が取得できなかった場合の不利益 ~高次脳機能障害の場合
(4)適切な医証を取得するには