コラム記事

交通事故で働けなくなった場合の休業損害の計算方法と請求方法

2018.09.03 休業損害

休業損害とは

休業損害とは、事故によって受けた症状固定までの傷病の療養期間中に、休業、または十分に稼働できなかったことで生じる収入の現実的喪失をいいます。

ポイントは3つあります。

症状固定までの期間であること
完全休業でなくとも、休業損害として認められ得ること(特に家事従事者や自営業者の場合)
実際に、収入が減少している証明が必要であること

給与所得者の休業損害

計算方法

一般的には、

(基礎収入日額)×(休業損害証明書上の休業日数)

で算定します。

基礎収入日額は、

(事故前の3ヶ月間の税込・時間外込給与総額)/(当該給与支払期間に相当する実労働日数)で算定します。


例)
・事故1ヶ月前:額面給与25万円(実労働日数23日)
・事故2ヶ月前:額面給与27万円(実労働日数24日)
・事故3ヶ月前:額面給与26万円(実労働日数24日)の場合


【計算方法】

(25万円+27万円+24万円)/(23日+24日+24日)=10,704円/日
→10,704円/日 が基礎収入日額となります。



上記基礎収入日額に対し、休業損害証明書上の休業日数を乗じて、休業損害を算定します。

請求方法

勤務先に「休業損害証明書」を作成してもらい、事故前年の源泉徴収票を添付して証明・請求するのが一般的です。

注意点

・休業が半日や時間休の場合は、基礎収入半日額や基礎収入時間給を算出して、それぞれ半日休数や時間休数を乗じて算出します。

・休業で有給休暇を利用した場合は、事故のせいで利用せざるを得なかった(入院・通院など)と認められる限り、当該有給休暇分も休業損害として算定します。


・損保会社は、基礎収入日額につき「実労働日数」で割る計算方法ではなく、「90日(=3ヶ月間)」で割る計算方法で主張してくることがあります。これに対抗するには、理論的な説明が必要であり、一般の方では難しいので、弁護士に委任した方がよいでしょう。

自営業者・事業所得者の休業損害

計算方法

いろいろな計算方法がありますが、一般的に裁判所で採用されている算定方法をご紹介します。

①(基礎収入日額)×②{(治療期間)×(平均休業割合)}(または認定休業日数)

①は、一般的に、{(事故前年の税務申告上の所得額)+(事故前年の税務申告上の固定費)}/(365日)で算定します。
事故によって、所得(=収入‐経費)が減り、事業を継続させるための無駄な固定費がかかったという理屈です。

②の部分は「どのくらい事業を休まなければいけなかったか、または影響があったか」という指標です。
これは、傷害の程度、後遺障害の有無・程度、事故後の事業所得減少の有無・程度など事案ごとに異なるので、一概には言えません。しかし、通常は入院期間は全く稼働できなかったことが明らかなので、当該入院日数は100%の休業損害が認められることが多いです。

問題は、通院期間中の平均休業割合(または認定休業日数)をどう求めるかです。

一般に傷害が重いほど、認定休業日数または平均休業割合が多くなる傾向にあります。最も多い交通事故の傷害と思われる頸椎捻挫・腰椎捻挫(むち打ち症)の場合は、裁判例上、当該通院期間中の20%~50%程度を休業損害として算定する例が多いと思われます。

請求方法

事故前年の税務申告資料(確定申告書及びその添付資料)の控えを損保会社に送付して請求します。

注意点

・税金対策で税務申告上の所得を少なく申告していたとしても、基礎収入額の基本的かつ重要な立証資料が税務申告資料なので、ほぼこれに基づいて所得額または固定費が算定されます。たとえ訴訟しても、裁判所は税務申告外の収入を認めることにかなり消極的です。

・基礎収入日額の固定費に何を算入するか、上記②の平均休業割合または認定休業日数をどの程度にするかは、損保会社と争いになることが多く、専門的な計算になります。自営業者の休業損害をしっかりと取っていきたい場合には、弁護士に委任した方がよいでしょう。

家事従事者(主婦・主夫)の休業損害

計算方法

①(基礎収入日額)×②{(治療期間)×(平均休業割合)}(または認定休業日数)で算定します。

①は、{事故前年または事故年の女性全年齢・産業計・学歴計の平均賃金(最近では370万円前後)}/(365日)、で算定します。

②は、自営業者の休業損害と同様の問題があります。むち打ち症の場合には、裁判例上、当該通院期間中の20%~50%程度を休業損害として算定する例が多いと思われます。

請求方法

特に定型的な書式などはありませんが、配偶者や子供と同居していることを立証するために、損保会社から住民票や戸籍の提出を求められることがあります。

注意点

・一般的に、損保会社は、家事従事者の休業損害を示談交渉前(治療終了前)に支払うことに消極的です。家事従事者の休業損害は、示談時にまとめて支払ってもらうのが一般的な実務となっています。

・60歳以上になると、女性全年齢・産業計・学歴計の平均賃金よりも減額したものを基礎収入日額にすることが多いです。

・家事従事者が休業損害を認められる理由は、「他人のために、無償で家事労働を提供している」という点を賃金収入に換算して、事故のために家事を提供できなくなった分を損害として支払ってもらうことにあります。


そのため、内縁や婚約中など法律上の親族になっていない場合にも、家事従事者の休業損害は、理論上認められ得ます。しかし、損保会社は、そのような場合の家事従事者の休業損害を支払うことに消極的であり、一般の方による交渉は困難を極めるので、弁護士に委任した方がよいでしょう。

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