コラム記事

将来の介護費用について

2015.06.05 費用

交通事故の被害に遭われた方に、後遺障害が残ってしまった場合、将来かかる様々な費用を合計すると、その金額は高額に上ります。中でも、将来の介護費用は、将来かかる費用の中で最も高額となる費目であり、かつ相手損保と最も激しく争われることとなる費目です。

では、この将来の介護費用は、どういった理由で争われるのでしょうか。将来の介護費用を算定するにあたって考慮される主な要素を見てみましょう。

将来の介護費用の算定において考慮される要素①

介護をするのは誰か?という問題

介護費用は、介護をする方が、交通事故被害者の方の祖父母、両親、兄弟姉妹などの近親者である場合と、職業的付添人(介護士やホームヘルパー等)である場合とで、その金額が大きく異なります。
損害賠償額算定基準(いわゆる「赤い本」)によれば、近親者の方が介護にあたられる場合、介護費用は日額8000円とされていますが、実際の裁判例は、概ね2000円から8000円の範囲に分布しています。これは、赤い本が想定している場面が日常生活全般にわたり常時の介護を要するような特に重度の後遺障害が残った方についての介護だからです。


これに対し、職業付添人が介護にあたる場合、介護費用は実費全額となり、具体的な裁判例によれば、概ね8000円から2万4000円で分布しており、それ以上の金額が認められているケースもあります。

将来の介護費用の算定において考慮される要素②

介護の内容はどういったものか?という問題

必要となる介護の内容によっても金額は異なります。どういった介護を受ける必要があるかということは、その交通事故被害者の方の具体的な後遺障害の内容や程度、生活状況に左右されます。後遺障害が特に重度の方は常時つきっきりの介護が必要となるでしょうが、重度の後遺障害ではあるものの特に重度とまではいえない場合は、随時の介護や監視の目があれば問題ないということもあります。常時介護か随時介護かは一応の目安であり、実際に必要となる具体的な介護は何かということも踏まえなければなりませんが、介護の手間が異なってくるのであれば請求が認められる金額も異なってくるというわけです。

将来の介護費用の算定において考慮される要素③

介護を要する被害者の生活場所はどこか(在宅介護か、施設介護か)?という問題

職業付添人が介護にあたる必要があるという場合であっても、介護の場所がどこになるか、つまり、在宅介護にするか施設介護にするかによっても介護に要する金額は大きく異なります。

施設介護の場合、在宅介護と比べて実際の日額が低いので、実費全額といってもそれほど大きな金額にはならないのが特徴です。どちらの基準で請求が認められるかは、現在の生活場所や将来の展望(在宅介護中か、既に施設入所中か、将来的に施設入所予定があるか、入所中の施設が長期入所困難な施設か等)によって異なります。

裁判例を検討する限り、裁判所における考え方としては、施設からの退所が見込まれる場合で、在宅介護を前提とした将来的な介護計画がしっかりとしていれば、在宅介護が否定されるような事情(例えば、在宅介護が難しいという医師の診断がある場合等)がない限り、概ね在宅介護の基準で判断されているように見受けられます。

既に被害者の方が施設入所中の場合、施設退所の時期やその可能性の高低、施設の性格(入所可能期間が最長5年とされている施設も多々あります)、入所中の施設の医師の判断、被害者の方の状況やご意向、在宅介護に向けた準備の状況(在宅介護が可能なように自宅を改造した等)や近親者の方のご意向、ご家庭の状況、施設海保と在宅介護の比較などがポイントとなってきます。

将来の介護費用の算定において考慮される要素④

自賠責保険では介護を要すると判断されていない場合でも将来介護費用は獲得できるのか?という問題

自動車損害賠償法施行令2条別表第1及び第2の後遺障害等級別等級表では、介護を要する後遺障害を以下の場合に限定しています。

第一級 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第一級 二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、常に介護を要するもの
第二級 一 神経系統の機能又は精神に著しい障害を残し、随時介護を要するもの
第二級 二 胸腹部臓器の機能に著しい障害を残し、随時介護を要するもの


しかし、上記に該当しない後遺障害の場合であっても、実際には介護費用を要するケースは多々あります。裁判例においても、上記に該当しない後遺障害が残ってしまった交通事故被害者の方に対し、将来介護費用の請求を認めたものが散見されます。

つまり、後遺障害等級が3級以下の方であっても将来介護費用が認められるケースはあるということです。過去の裁判例を検討する限り、認められた金額は概ね日額1000円から6000円に分布しており、それ以上に認められた場合も若干数あります。ポイントは日常生活における介護の必要性とその程度です。

具体的には、転倒が頻繁にある、歩行・昇降や体位変換、排尿・排便、食事、衣服着脱、入浴、洗濯に著しい支障をきたしている、監視が必要であるなどの事情を事細かに立証していく必要があります。やはり、残存する後遺障害等級が高いほど認められやく、かつ金額も比較的高額になりやすい傾向にあります。

以上のように、将来介護費用は、重度後遺障害が残ったからといっても安易に認められるものではありません。また、特に重度の後遺障害が残ってしまった場合でも、交通事故被害者の方ご本人の将来的な介護がどのように行われていくか、それをきちんと立証して裁判所に理解してもらえたかによって金額が大きく異なります。通常は、ご家庭の状況から、被害者の方の将来的な介護は近親者の方がまず間違いなく対応できる、または、入所先施設に恒久的に入所し続けることができるということはほとんど期待できません。

そのため、将来的にご本人の介護で金銭的に困らないようにするためには、将来的な介護の展望を見据え、将来的な介護計画をきちんと立て、これをどうやって立証して裁判所に理解してもらうようにするか、弁護士と二人三脚で何度も議論を重ねていく必要があります

近親者の方が交通事故の被害に遭われ、将来的には介護費用がかかってきてしまいそうでお困りの方におかれましては、ぜひ弊所へご相談ください。少しでもお力になれることがあれば幸いです。

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