嗅覚障害(嗅覚脱失)により,後遺障害部分のみでも356万円を前提とする示談が成立した事例
依頼者:60代女性/ヘルパー
後遺障害内容:嗅覚障害(嗅覚脱失)
後遺障害等級:嗅覚脱失について12級を獲得
賠償項目 |
ご相談前 | 獲得額 |
増加額 |
後遺障害慰謝料 | 0万円 | 290万円(裁判基準) | 290万円 |
後遺障害逸失利益 | 0万円 | 66万円 | 66万円 |
合計額 | 0万円 | 356万円 | 356万円 |
※基礎収入額は60万円/年
※※総額獲得額は,過失相殺(被害者側過失10%)後の金額である706万円,通院関係費を除いても,自賠責保険からの支払いを入れると468万円
1 相談・依頼のきっかけ
症状固定後,嗅覚障害の後遺障害が残ったにもかかわらず,保険会社からその分の補償を無視した提案がなされたため,被害者の方を心配したご家族に付き添われ,ご相談にいらっしゃいました。
2 後遺障害等級申請に向けてのフォロー
嗅覚障害の場合,多くの病院ではアリナミンFテストしか行わずに診断書が作成されます。しかし,アリナミンFテストはごまかしができてしまうテストであるため,自賠責保険では,判定資料として除外しております。
この依頼者の方についても,当初アリナミンFテストしか行われていなかったため,このまま自賠責保険が審査してしまうと非該当となってしまう状況にありました。異議申し立ての場合,後遺障害等級が認定される確率が極端に落ちるリスクがあります。そこで,依頼者の方にはアリナミンPテストまたはT&Tオルトファクトメーター検査を受けてもらう方向でアドバイスし,その検査報告書やその他の必要書類を出してもらうよう,病院と話し合いました。
3 後遺障害等級の獲得
結果,無事,嗅覚脱失について12級を獲得できました。
4 弁護士関与の結果
その後,保険会社と交渉しましたが,当初は逸失利益を認めようとしませんでした。嗅覚障害の場合,労働に直接影響する職業(料理人や危険物取扱業)などでなければ逸失利益の獲得は困難です。この依頼者の方の場合,業務の一部に料理があったため,その点を強調して粘り強く交渉致しました。
その結果,後遺障害慰謝料については裁判基準の満額回答,後遺障害逸失利益も一部の支払いを受けられる内容で,裁判を経ることなく示談解決となりました。
※詳しくは冒頭の表をご覧ください。
5 弁護士の所感・解決のポイント
後遺障害の内容によっては,既に病院で行われた検査だけでは自賠責保険の審査基準を満たさないケースが良く見受けられます。病院としては,治すことに主眼を置いているので,治せない障害については,一応の検査結果が出てしまえばそれ以上詳しい検査を行っても意味がないと考えているからです。
検査が足りていないだけで後遺障害が認定されない落とし穴にはまる前に,治療中でも,自賠責実務と医学に関する知識を備えた弁護士にご相談されると180度違った結論になることがあります。本件は,ぎりぎりのタイミングで自賠責実務と医療の知識に関する両面からうまくフォローができた好例でした。