右肩の痛みについて,異議申し立てにより14級9号を獲得した事例
依頼者:50代男性/会社員
後遺障害内容:頸椎捻挫,左上肢の痺れ,右肩関節周囲炎
後遺障害等級:右肩痛について14級9号を獲得
賠償項目 |
ご相談前 | 獲得額 |
増加額 |
入通院慰謝料 | 100万円 | 125万円(裁判基準) | 25万円 |
後遺障害慰謝料 | 0万円 | 110万円(裁判基準) | 110万円 |
後遺障害逸失利益 | 0万円 | 40万円(裁判基準) | 40万円 |
合計額 | 100万円 | 275万円 | 175万円 |
1 相談・依頼のきっかけ
依頼者の方は,過去既に頸部に14級9号が認定された方でした。
そのため,当初,自賠責保険は後遺障害等級非該当との判断をしました。
2 異議申し立てに向けたフォロー
(1)後遺障害等級獲得にあたっての問題点
過去の交通事故で後遺障害等級が認定された場合,同一部位に同一の等級は認定されません。
例えば,過去のむち打ちがかなり改善したり治ったりしていた状態で事故に遭い,痛みが再発したとしても,それが12級に該当する頸部痛(重度のヘルニア)でもない限り,自賠責保険は非該当との判断をするのです。また,首や腰以外の部位の痛みについては,明確で重い他覚的所見がない限り,後遺障害等級が極めて認定されにくいところです。
この依頼者の方の場合も,過去に首に後遺障害等級が認定されていたため,上肢の症状での後遺障害等級の獲得が難しい状況にありました。
しかし,首の痛みが再発し,右肩や左腕にも痛みやしびれが生じたとのことであり,非常につらい思いをされていたため,14級9号の獲得を目指す方針となりました。
(2)問題点を解消するための具体的なフォロー
まず,医師から,後遺障害診断書以外にも,痛みによる等級の認定を有利にする可能性のある補助資料を取り付けました。
しかし,それら診断書の記載において,右肩の痛みは,かなり時間が経過してからの発症であるとなっておりました。
診断書の記載内容と依頼者の方の話とが大きく食い違うため,不審に思い,カルテを分析検討いたしました。
そうしたところ,幸運にもカルテの記載の中に事故の1週間後に右肩の痛みを思わせる記載を発見しました。
そこで,カルテの記載に基づき医師と協議し,診断書の記載内容の修正を依頼しました。
3 後遺障害等級の獲得・事件解決
無事修正された診断書をもとに自賠責保険へ異議申し立てを行いました。
その結果,右肩の痛みについて14級9号を獲得しました。
その後は裁判で和解となり,すべて裁判基準を満たす内容で和解が成立しました。
※詳しくは冒頭の表をご覧ください。
4 弁護士の所感・解決のポイント
(1)裁判所はめったに独自の判断で後遺障害等級を認定しません
後遺障害等級が非該当となってしまった場合,後遺障害の存在を前提とした解決をするには,一つは裁判により詳細かつ具体的に,前回の事故以降の経過も含め立証していくという方法が考えられます。
しかし,最近の裁判所は,なかなか独自に再度14級を認定する判断をしてくれませんので,裁判を経ても納得のいく解決が極めて困難な状況にあります。
そのため,自賠責保険における後遺障害等級獲得が極めて重要です。
(2)自賠責保険への異議申し立てによる後遺障害等級獲得の重要性
本件は,依頼者の方の通院経過がしっかりしていたこと,幸運にもカルテに重要な記載がされていたことから,医療知識がある弁護士であれば良い結果を出すことができたといえる好例です。
自賠責保険における後遺障害等級の認定にあたってはカルテの記載と通院の経過が重要です。そのため,不幸にも後遺症が残ってしまう場合に備え,治療中から,自賠責実務と医療の知識を有する弁護士にご相談されることをお勧め致します。