むち打ちの後遺障害について、14級認定済みのご主人は185万円の増額を獲得し、奥様は14級9号を獲得したご夫婦の事例
依頼者:40代男性/自営業(ご主人)、40代女性/専業主婦(奥様)
後遺障害内容:ご主人は外傷性頸部症候群(むち打ち)、背部挫傷、腰椎捻挫。奥様は外傷性頸部症候群(むち打ち)、右肩関節捻挫。
後遺障害等級:ご主人は頸部痛14級9号、腰部痛14級9号(併合14級)。奥様は頸部痛14級9号獲得。
<ご主人>
賠償項目 |
ご相談前 | 獲得額 | 増加額 |
入通院慰謝料 | 70万円 | 110万円(裁判基準) | 40万円 |
休業損害 | 45万円 | 45万円 | 0万円 |
交通費・その他費用 | 5万円 | 5万円 | 0万円 |
後遺傷害慰謝料 | 40万円 | 110万円(裁判基準) | 70万円 |
後遺障害逸失利益 | 75万円 | 150万円(裁判基準以上) | 75万円 |
合計額 | 235万円 |
420万円 |
185万円 |
<奥様>
賠償項目 |
受任直後 | 獲得額 | 増加額 |
入通院慰謝料 | 55万円 | 105万円(裁判基準) | 50万円 |
休業損害 | 17万円 | 58万円 | 41万円 |
後遺傷害慰謝料 | 0万円 | 110万円(裁判基準) | 110万円 |
後遺障害逸失利益 | 0万円 | 77万円(裁判基準) | 77万円 |
合計額(慰謝料、休損) | 72万円 | 350万円 | 278万円 |
1 交通事故発生
ご家族の車が信号待ちで停止していたところ、突然後続車から追突され、ご家族全員が首や腰を痛めました。
2 相談・依頼のきっかけ
ご依頼者のご夫婦は、ご加入の保険会社経由で、弊所代表阿部の旧知である他の弁護士へ車両等の物損の損害賠償請求事件を依頼しておりました。
ただ、同弁護士が、お怪我に対する賠償金獲得にあたり、私が交通事故事件の処理に詳しいということを覚えていてくれ、私の力が必要と判断し、同弁護士のご紹介により、同弁護士と共同して事件にあたらせていただくこととなりました。
3 初回ご相談で問題となった論点
初回のご面談でポイントとなったのは以下の点でした。
①ご主人について
相手損保から受けた提示額をどの程度増額できるか。
ご主人が自営業の方であり、かつ事故後収入的なマイナスが帳簿上認められないため(事故後もご商売が順調)、休業損害の増額が難しいという点が問題になりました。
②奥様について
通院経過や検査の状況などからすると、後遺障害等級の認定が困難であると思われたため、これをどのようにフォローしていくかという点が問題になりました。
4 当事務所の活動(ご主人について)
①交渉開始
さっそく交渉を開始し,とにかく全体的に強気の請求で行く方針としました。
しかし、相手方保険会社との交渉が早々に難航しました。
そこで、ご本人のご希望を伺い、いきなり訴訟とするのではなく調停を申し立て、相手方にも弁護士をつけさせて交渉を続行するということとなりました。
②調停申立
調停での論点は「減収がない状況での休業損害の増額の困難性」でした。
ご主人としては増額をあまり期待されていないご様子でしたが、休業損害の増額を盛んに主張・立証し、休損増額がダメでも他の費目を大目に増額させようという方針にて、怪我の影響で本来不要な経費が余分にかかっているとみることもできるはずだ等、様々な主張・立証で攻めました。
5 当事務所が関与した結果(ご主人について)
交渉は難航しましたが、粘り強く交渉を続けた結果、以下のとおりの増額となりました。
①慰謝料関係は裁判基準の満額まで増額
②逸失利益については裁判基準以上の増額
→裁判実務の原則である事故前年ベースではなく、基礎収入が増額となった事故当年をベースに裁判基準で算定した金額まで増額した金額の提示を引き出すことができました。
③ただし休業損害の増額はされず
※詳しくは冒頭の表をご覧ください。
6 当事務所の活動(奥様について)
①後遺障害等級の獲得
治療自体は終了しているので、ひとまず医師と協議して後遺障害診断書等を作成していただく方針となりました。
診察にあたった医師から、後遺障害等級をとることは難しい、やるだけ無駄だとまで言われ、前向きなご協力をいただけなかったため、困難を極めましたが、首の痛みが連続していたことを示す診断書の取得には成功しました。これをもとに自賠責保険に対し後遺障害等級の申請を行った結果、何とか14級を獲得することができました。
②交渉開始
この結果をもとに交渉を再開しようとしたところ、相手方保険会社から、ご主人同様に調停でなければ交渉を受けることができない旨の申し出があったため、やむなく交渉による解決を断念しました。
③調停申立
奥様もご主人同様いきなりの裁判を望んでいらっしゃらなかったため,調停を申し立て、粘り強く交渉を行いました。
7 当事務所が関与した結果(奥様について)
時期が年末であったこともあってか(年末は比較的交渉がまとまりやすい時期です。)、最終的には満足のいく金額提示を受けることができました。
※詳しくは冒頭の表をご覧ください。
8 弁護士の所感・解決のポイント
①ポイントを押さえた強気の交渉の重要性
本件は,ご夫婦が無欲な方々であったため、あえて私から強気に交渉する方向でのご提案を色々とさせていただきました。
あまりご無理を申し上げるのも忍びないとは思っておりましたが、お二人とも私を良く信頼していただき、お願いした必要な資料をきちんと揃えていただくなどのご協力をしっかりとしていただけました。
②弁護士,ご依頼者様との二人三脚の重要性
結果、調停による交渉のため若干の時間はかかったものの、その後訴訟をしたとしてもあまり大きな増額は期待できないか、場合によっては調停段階で受けた提示より減額になるリスクもあるというレベルまでの増額に到達できました。
その後、お二人にはインタビューまで快くご協力していただき、心に刺さる感謝のお言葉をたくさん頂戴した折には、結果的に私の方針にご満足いただいていたことに安心するとともに、弁護士冥利に尽きるという思いでいっぱいになりました。
この結果は、私だけの力によるものではなく、私を深く信頼し、ご提案に従って諸事ご協力いただいたお二人のお力によるところが大きいと思っております。
お二人にはこの場にて深く感謝申し上げます。