むちうち(鞭打ち)について

 

むち打ちは、交通事故を原因として発症する傷病のなかで最も多くみられる症状です。

平成25年における交通事故の死傷者数は全国で約78万人に上りますが、そのうちの約44万人(死傷者全体の実に約56%)の方が、頸部(首)を負傷されております(警察庁「平成25年中の交通事故の発生状況 損傷部位別・状態別死傷者数」)。

私は、以前所属していた法律事務所において、むち打ちの被害者の方から数百件もの法律相談を受けました。
そのうち、ご依頼をお受けした100件以上の被害者の方について、関東各地の病院が発行した後遺障害診断書を拝見し、自賠責保険へ後遺障害等級認定の申請を監督し、認定結果を踏まえ、保険会社と交渉して参りました。
また、それ以前の過去に蓄積された事例についても、各被害者の方の通院の経過、症状、検査結果、後遺障害診断書やその他の必要書類上の記載内容等と自賠責保険の認定結果を突き合わせ、後遺障害等級認定のポイントとなる事項について研究を重ねて参りました。

その経験を踏まえると、交通事故でむち打ちになってしまった方としては、通院治療中及び症状固定にあたってどのように対応すべきか、以下、適正な賠償金を獲得する上でポイントとなる事項を説明します。

むち打ちとは

そもそもむち打ちとは、診断名ではなく、受傷機転を示す用語に過ぎません。
交通事故により頸部(首)が過度に伸びたり曲がったりした首が鞭を打つような運動をした後に生じた損傷であるため、むち打ちといわれております。
医学的な診断名としては、「頸椎捻挫・頸部捻挫・頸部損傷・頸部挫傷・外傷性頸部症候群」とされており、診断書等にもそのように記載されます。

症状としては、頸部痛、頭痛、頸椎運動制限、肩こり、はきけ、上肢の痺れ感、腰痛のほか、めまい、耳・眠症状、上肢放散痛などの自覚症状がみられることもあります。
他覚所見としては、頸椎運動制限、後頚部筋の圧痛のほか、知覚障害や神経根症状など神経学的陽性所見が出現することもあります。

しかし、実際のところむち打ちの病態は多様で、原因等が解明されているわけではなく、科学的根拠に基づく診断指針も確立していないのが現実です。

むち打ちで適切な補償を受ける上での問題点

しかし、受傷者のうち12%が、交通事故から6か月後も症状が継続し慢性化して多様な症状を呈しているとの調査結果があり(コホート調査)、私は、症状が慢性化してしまった方からのご相談をこれまで多数受けて参りました。一般に、むち打ちの方の多くは、3か月から6か月で治癒するといわれております(日本交通科学協議会主催・むち打ち損傷研究会によれば3か月での治癒率は70%)。

このように症状が慢性化して残存してしまった場合、神経症状として後遺障害14級9号(自賠責保険へ被害者請求をしてこの等級が認定されると、ひとまず自賠責保険から75万円が支払われます。)が認定される可能性があります(なお、12級13号が認定されるという可能性もありますが、むち打ちでこの等級が認定されるケースはやや例外的です)。

(1)医師との連携の困難性

ところが、むち打ちの症状は、例えば骨折後に骨が不正癒合した場合等と異なり、明確な他覚所見(レントゲンやCT、MRIでの画像所見など客観的に異常が分かる検査結果)が認められないことが多く、自覚症状が中心となります。

そのためむち打ちであることを自賠責保険や裁判所などの第三者に認めさせようにも立証が困難です。
また、軽微な他覚所見が認められるケースは多数ありますが、それだけではむち打ちの立証としては不十分です。

被害者の方の中には、医師から「後遺症が残る」「ヘルニアがある」と言われたから後遺障害等級が認定される、と誤解しておられる方が多くいらっしゃいます。

しかし、自賠責保険や裁判所の後遺障害の考え方と、医師の後遺障害の考え方とではまったく異なるため、医師が後遺症を認めたからといっても、残念ながら、それだけでは、自賠責保険は後遺障害等級を認定してくれません。

後遺障害等級の認定を受けるには、適切な通院治療の上、適切な検査の検査結果や諸症状がカルテや診断書に適切に記載される必要があります。
ところが、通院先の整形外科の先生が各種検査をしてくれず、後遺症診断書の記載も満足にしてくれないなど、協力が得られないケースもあります。
このような事態になる要因として、医師の考える後遺症の理解と、自賠責保険や裁判所における後遺障害との理解に隔たりがあることが挙げられます。

そのため、法的な観点に基づく弁護士によるアドバイスや、法的な観点からの医師との協議が必要となります。

(2)治療費の打ち切り

むち打ちの場合、症状が第三者からは分かりづらいこともあって、保険会社は症状を軽く見る傾向にあり、事故後3か月程度で、突然治療費の支払いを打ち切られることなどもよく見受けられます。

この場合、治療を続けると、後の示談交渉において、通院期間が長すぎるので打ち切り後の治療費は支払わない等と言われ、争われることもあります。
しかし、一定期間通院をしなければ、後遺障害の認定は困難です。症状に合わせて、通院を継続するか否かを慎重に検討する必要があります。

まだ治療を続けたい、続ける必要があるといった場合、打ち切りと言わせない、治療の継続を認めさせるためのポイントについて、弁護士に相談できることは多くありますので、当事務所ではそういった場合に備えたアドバイスができます。

後遺障害等級が認定されるためのポイント

不幸にも症状が残存してしまったにもかかわらず、通院治療中の対応が不十分・不適切であった場合、残念ながら後遺障害等級は認定されません。
その場合、症状に見合った後遺障害等級が適切に認定された方、例えば14級9号が認定された方と、非該当となってしまった方とを比べた場合、賠償額(裁判基準)では約185万円の差が出ます(主婦の方の場合)。
被害に遭われた方のむち打ちが治癒することが何より一番良いことなのですが、不幸にも症状が残存してしまう場合が多数見受けられ、症状が残存するのかどうかは、残念ながら治療中にはわかりません。

むち打ちの場合、自賠責保険で後遺障害等級が認定されない限り、裁判所が独自に14級を認定してくれるのは、立証の困難性から、極めて例外的なケースを除きほとんどありません。

つらい症状が残ってしまったにもかかわらず、かたや適切な補償が受けられたのに対し、かたや適切な補償が受けられないという不幸な事態を防ぐには、事故直後の対応、通院の経過、症状の推移、適切な検査の受診、症状固定時の対応がポイントとなります。

以下、その概要をご説明しますが、詳細はお一人お一人症状が多様であるため、実際に知っておくべきことは多岐に渡ります。
ご相談に来られた方にはさらに分かりやすくご説明させていただいておりますので、疑問がおありの方は実際にご相談に来られることをお勧め致します。

(1)事故直後の対応

むち打ち損傷の特徴の一つとして、事故直後の自覚症状が発生するまでに長い場合で1週間くらい間が空くことがあるという点が挙げられます。
ご自身としては症状が軽く後遺症が残りそうにないと感じる場合であっても、事故直後は症状が発生せず、数日経過してから痛みが出てくる場合もあります。

そのため、今後の流れや、どのような対応をとればよいのかなどといったことを知るため、事故直後など、なるべく早い時期に弁護士に相談することは重要といえるでしょう。

(2)通院の経過、症状の推移、適切な検査の受診

事故直後から通院しているのか、どの程度の頻度で通院しているのか、整形外科に通っているのか、接骨院に通っているのかなどの治療状況により後遺障害の認定が下りる可能性に違いが生じます。
例えば、痛みやしびれなどの具体的な症状が、いつから、どこに、どのように出ているか、またそれが経過診断書やカルテにどのように記載されているか、などは一つのポイントです。

そして、痛みやしびれが出ているだけでなく、この自覚症状が受傷箇所と医学的に整合するものであるかどうかも一つのポイントとなります。

ですので、医師に対し、カルテや経過診断書上に適切な記載を求めることが必要になります。

ただ、そもそも一般の方がカルテや経過診断書を見ても、例えば、果たして自覚症状が受傷箇所に医学的に整合しているのかなどはよく分からないと思われます。
むち打ちに関する診断書やカルテを読める弁護士に相談する必要があるでしょう。

また、むち打ちは、レントゲンやMRIなどの画像上では、客観的な所見が表れにくい点が後遺障害の認定を難しくしています。
しかし、何らかの客観的所見がみられるケースもままあります。
そのため、例えば、MRI検査のほか、筋力、反射、神経根症状誘発に関する客観性の高いテストを受け、所見が出ているか否かということなどもポイントとなります。

(3)症状固定時の対応

ご通院先の病院としては、救急搬送された病院から紹介された街の整形外科や、お住まいから近い整形外科などに漫然と通院されているケースが多いと思われます。
ただ、その場合、医師とのコミュニケーションがあまりうまくいっていなかったり、保険会社から治療費の打ち切りの話があった時には医師からも治療を終了させて症状固定を強引にしようとされたりといったケースをよく耳にします。

自賠責保険へ後遺障害等級の認定を申請する際には、症状固定の診断を受け、後遺障害診断書を医師に作成していただく必要があります。

しかし、医師とのコミュニケーションがうまくいっていない場合、後遺障害診断をはじめとする書類の記載内容が、自賠責保険の審査との関係では的外れなものや不要なものばかりで、必要な記載がされていなかったり、検査をしてほしいと頼んでいるにもかかわらず、治療には必要ないとして検査を行ってもらえなかったため、検査結果の記載が後遺障害診断書にされなかったり等、様々な支障が生じます。

こういった事態を防ぐため、どういった病院へ通院しているかということも、自賠責保険において後遺障害の認定を受けるためにはポイントとなります。

当事務所では、依頼をお受けした事案の中で、転院の必要があり、それが可能である場合、これまで経験した多数の事例の病院に関するデータの中から、「○○病院の○○先生はしっかりとみていただける」などのアドバイスも可能です。

また、後遺障害診断書の内容については、被害者の方お一人お一人ごとの症状に応じて的確な記載がなされていなければ、後遺障害の認定を受けることが難しくなります。
そのため、後遺障害診断書の内容をチェックするにあたっても、単に、検査結果が記載されているとか、症状がいろいろ記載されているとかいったことを見るだけでなく、具体的な所見に応じた症状や検査結果が出ているか、多岐に渡るポイントを検討しなければなりません。
医師とのコミュニケーションがうまくいっていない場合は、なおさらチェックの必要性が高いです。

当事務所では、仮に、医師とのコミュニケーションがうまくいっておらず、かつ転院が困難である場合も、症状固定前に被害者の方と協議し、必要に応じて、症状固定後、後遺障害診断書の記載内容について病院と直接協議し、できる限り受けられるべき後遺障害等級の認定が受けられないといった事態を防ぐべく対応致します。

(4)自賠責保険への後遺障害等級認定の申請

以上の経過を経てそろった必要書類をもとに、自賠責保険では、後遺障害等級の認定可否について審査されております。
自賠責保険への後遺障害等級認定の申請は、相手方保険会社を通じて行うこともできます。この申請方法により自賠責保険から下された審査結果を事前認定といいます。

しかし、事前認定の申請方法をとった場合、相手方保険会社が必要資料を整えてくれるものの、相手方保険会社の見解も資料として添えられてしまいます。
この資料は、保険会社による医師面談の結果や、相手方保険会社の顧問医師の見解や診断書類等を踏まえた、相手方保険会社が作成する意見書のような書類です。

つまり、事前認定の申請方法をとった場合、相手方保険会社に有利な内容の資料が添付されてしまうのです。

当然、後遺障害等級は認定されにくくなります。
また、仮に後遺障害等級が認定されず非該当となってしまったけれど、その結果に対して再審査の請求(異議申立)をしようという場合は、この相手方保険会社が添えた資料に記載された内容を覆すような資料をこちらも用意しなければならないというハンデを負います。

その上、相手方保険会社が添えた資料は、自賠責保険が事後的な開示に応じないため、ブラックボックスになっております。
つまり、再審査の請求にあたってのポイントが絞れず、新たな資料の収集が極めて困難になります。

よって、自賠責保険への後遺障害等級の申請は、相手方保険会社に頼らず、被害者の方ご自身で行うべきといえます。

しかし、被害者の方ご自身で自賠責保険への申請を行うことは実際には難しいでしょう。そこで、当事務所では、自賠責保険に対する後遺障害等級認定の申請を、被害者の方を代理して行っております。多数のむち打ち損傷事例における経験を通じたノウハウをもとに、個々の依頼者の方ごとの個別事情を踏まえ、自賠責保険への後遺障害等級認定の申請を全面的にサポートすることが可能となっております。

なお、後遺障害等級の認定申請は申請後、その認定が出るまで、多くの事案では2か月程度、事案に応じてそれ以上の期間を要します。

被害者の方によっては、その審査期間が経済的なダメージにつながることもあるので、後遺障害等級が認定される可能性がない事案であるにもかかわらず申請をし、むやみに解決を遅らせてはならないと考えております。適切なタイミングでの事件解決には、自賠責保険における審査結果について、正確な見通しをもてる経験、判断力が必要です。

当事務所では、これまで経験した多数の事案を踏まえ、後遺障害等級が認定される可能性の有無を依頼者の方にお伝えし、自賠責保険へ後遺障害等級の認定を申請すべきか否かについてのアドバイスも可能です。

賠償金の交渉

しかし、当事務所では、原則として、示談交渉の段階でも、相手方保険会社からの提示金額が裁判基準に達していなければ安易に示談しないという姿勢で対応致します。むち打ち損傷により後遺障害の認定が下りた場合、多くの事案では後遺障害等級14級9号が認定され、その後遺障害慰謝料は裁判基準で110万円です。近年、交通事故の件数を多く扱っていることを謳っている法律事務所は多数ありますが、大量の事件を早期に処理することに主眼を置き、裁判基準より低額の基準で和解に応じているケースがよくあるということを耳にします。

また、後遺障害慰謝料や後遺障害逸失利益の提示金額を個別で見ると裁判基準には達していないけれども、休業損害なども合算した賠償金額総額をみると、裁判をすればかえって減額になってしまう可能性があるか否か、裁判のため時間ばかりいたずらにかけてしまう可能性があるか否か(裁判には解決まで約1年かかります。)、という多角的な視点からも、示談に応ずべきか否かを適切にアドバイス致します。

むち打ちで苦しんでいる方々へ

むち打ちは、ご本人としては非常に苦しい思いをされているにもかかわらず、その多くの症状が自覚症状であるため、症状の立証が困難で適切な補償を受けにくいという特徴を持っております。
そのため、むち打ちの被害者の方がもし事件の依頼をされる場合は、依頼する弁護士によって、得られる結果に大きな差が生じてしまうと考えております。むち打ちの被害者の方としては、少しでもむち打ち損傷のフォローに詳しい弁護士に依頼すべきでしょう。

私は、むち打ちの医学的知見をはじめとし、自賠責保険の実務、示談交渉の実務、裁判の実務について、これまで多数の経験を積んできたものと自負しております。

当事務所と致しましては、少しでも交通事故によるむち打ちに苦しむ被害者の方々のお力になれればと思っておりますので、お気軽にご相談いただけますと幸いです。

また、ご相談のタイミングによって後遺障害等級の認定可能性に大きな差が生じるケースも多数あります。ご相談にいらっしゃる場合は、なるべくお早目にご相談にいらっしゃることをお勧め致します。

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