びまん性軸索損傷について

外傷時,脳は頭蓋内でかなりの歪み,移動,ズレが生じます。

その結果,大脳半球白質の軸索やミエリン鞘が広範にわたって損傷を起こすとされ,その病態をびまん性軸索損傷と呼びます。重傷頭部外傷の方で,頭蓋内血腫などがないのに意識障害が長く続くのは,このびまん性軸索損傷が原因であると考えられております。

軸索損傷は病理学的に名づけられた一次性損傷ですが,脳梁や中脳,脳室周辺に起こりやすい傾向にあります。交通事故被害者など頭部外傷患者の生存期間によって,認められる病理学的所見が異なります。

短期間(数日)生存例では,白質にびまん性に軸索腫脹がみられます。脳梁や吻側脳幹の背外側1/4部(びまん性軸索損傷の脳幹病変において典型的に損傷が認められる部位)に限局せず,大脳半球,小脳,脳幹全般にわたります。

中間(数週間)生存例では,白質全般に多数の小さい小膠細胞の塊がみられ,それらは小さい組織損傷および変性した軸索を示しております。

数か月後に死亡した例(植物状態)では,大脳半球,脳幹,脊髄白質全般にワーラー変性がみられ,その結果,局所病変は分からなくなって脳室の拡大がみられます。

このように,びまん性軸索損傷の予後としては,死亡という結果に至るケースがあるほか,残存する後遺障害の代表例として遷延性意識障害(植物状態)や,高次脳機能障害,外傷性てんかんが挙げられます。

>遷延性意識障害(植物状態)についてはこちら

>高次脳機能障害についてはこちら

>外傷性てんかんについてはこちら

 

びまん性軸索損傷の方におけるCTでは著明な所見に乏しく,脳梁や深部白質ならびに上位脳幹背外側部にわずかな出血が見られる程度ですが,このような方が生存した場合には広範な脳萎縮となります。例えば,交通事故による受傷直後から意識障害が強いものの(GCS7),受傷時のCTではわずかな点状出血があるほかには所見が得られなかった例で,3か月後もなお遷延性意識障害(植物状態)が継続し,同時点では脳室の拡大が認められ広範な脳萎縮となっていたという報告があります。

MRIを施行することによって,CTではあまり所見が得られない病変部の診断が可能となってきており,T2強調画像で,損傷した部分は高輝度(high intensity)を示します。例えば,交通事故による受傷直後から強い意識障害(GCS7)があったものの,CTでは異常が見いだされなかったところ,MRIのT2強調画像では右大脳基底核,右視床,左中脳に高輝度信号がみられ,後半に損傷が生じていたことが確認されたという報告があります。

なお,びまん性脳損傷の範疇に入れられているものに,広範性能腫脹があります。これは軸索損傷と異なり,二次性損傷の要素が多く,回復可能と考えられております。

参考文献:標準脳神経外科学(第12版)

 

 

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