遷延性意識障害(植物状態)

交通事故によって遷延性意識障害となられた被害者の方のご無念は計り知れないものがございます。しかし、被害者の方はもちろん、被害者の方の介護にあたる残されたご家族のご苦労や悲痛さは、ご負担のあまりの大きさから、筆舌に尽くしがたいものがあります。

 

そのような被害者及びご家族の方々にとって、少しでもご参考になればと思い、本項では遷延性意識障害の後遺障害を負われた場合における、交通事故賠償のポイントを説明致します。

 

遷延性意識障害とは、重度の昏睡状態が継続した状態をいいます。この後、自力での移動ができない、自力での摂食ができない、糞や尿の失禁状態にある、視線で物を追うこともあるが認識できていない、簡単な命令に応じることはあるものの意志疎通できない、意味のある発語ができない等、6つの条件に当てはまる状態が3ヶ月以上の間継続した状態を、植物状態といいます(日本脳神経外科学会1976年発表の定義)。

 

常に介護を要する遷延性意識障害の場合は、適正な等級を獲得して第1級の等級が認定されると、自賠責保険から、4、000万円の補償を受けることができます。

 

示談交渉、裁判上の問題点

1 賠償額算定方法と賠償金回収までの費用負担の問題

 

症状固定日の判断

自発呼吸すら不可能で回復の可能性がまったくない脳死とは異なるため、遷延性意識障害、植物状態となってしまわれた被害者の方は、一定程度の入院を経て、病院からの退院(転院)を余儀なくされます。症状固定との診断を受け入れて、在宅介護に移行するか、転院先を確保して治療を続けるかは難しい決断です。諸説ありますが、病院では院内感染に危険もありますので、ある程度の時期に症状固定を受け入れ、介護に移行するほかないと思われます。なお、症状固定後も、介護へ移行せず病院に入院し続ける場合、仮に受け入れ先病院があったとしても差額ベッド代等、後に回収できない費用が発生する恐れがありますので注意が必要です。

 

このような判断には、専門的な知識と経験を積んだ弁護士によるアドバイスがないとなかなか判断ができないところでしょう。

 

2 誰の介護を受け、賠償金獲得まで現実の肉体的・経済的負担に耐えられるかという問題

遷延性意識障害の場合、適正な賠償額の獲得が難しい理由は、後遺障害等級の認定を受けること以上に、将来の介護費用や、自宅介護とする場合の自宅改造費等について、裁判上、事細かな立証が求められる点です。

 

病院や介護施設での介護を選択し、転院を続ける場合、賠償金を受けるまでの費用負担は比較的少額で済みますが、その分、請求できる賠償額も影響を受け、あまり高額になりません。また、将来的にも転院先や入所先が必ず見つかる保証がないのも難点です。さらに、介護保険を現にご利用されている場合は、賠償金の回収により介護保険から、これまでの費用の返還を求められる可能性がありますのでこのことも念頭に置かなければなりません。

 

在宅介護した場合、介護のため自宅の改造を行わざるを得なくなる場合もあろうかと思いますが、すべてが認められるとは限りません。また、やはりご家族に現実的な負担がかかります。そこで、現実の負担を軽減するために職業付添い人による介護を選択するという考え方もありますが、費用が高額に上るため、すべてが請求できるとは限りませんし、それ以上に、賠償金を回収するまでの間、高額な日預負担を立て替え続けることができるかという問題もあります。立て替え続けるための原資とするために、ひとまず自賠責保険から保険金を回収するということが考えられますが、後に述べる後見開始申し立ての手続きを経た上で、さらに自賠責保険への請求を行うという二重のハードルがあります。

 

どの時期にどのような介護を選ぶべきか、示談が良いか裁判が良いかなどといったことを判断するには、先の見通しを的確に予測し、被害者の方のご状況や、ご家族の方のご状況、家計の状況も踏まえた判断が必要になります。やはりこの点も専門的な知識と経験を積んだ弁護士によるアドバイスがないと判断が難しいでしょう。

 

3 家庭裁判所へ成年後見開始の申し立てが必要となる

賠償金はあくまで被害者の方の財産となるため、近親者の方が、被害者の方に代わって賠償金を確保するには、成年後見開始の申し立てを家庭裁判所に対して行わなければなりません。裁判手続ですので、必要な資料や申立書の記載内容など、一般の方には分からないことも多いと思いますので、手続を代理する弁護士等の専門家の助力が必要な場面です。

 

なお、被害者の方の財産管理を行う後見人には、ご家族の方がなられるというケースが多いですが、後見人は、日々の資産管理を被害者の方がご存命である限り行わなければならず、毎年、家庭裁判所に収支報告を行う必要があります。ご負担を考えると、後見人を誰にするかということも、弁護士等の専門家と相談して決める必要があるでしょう。

 

4 保険会社との示談交渉から裁判手続まで

保険会社からは、介護費が高額であるとか、被害者の方の余命はもっと短いはずだという心無い反論を受けます。しかし、このような反論も一理あると考えられてしまっているため、十分な資料をそろえ、的確に反論していく必要があります。

 

回復を信じて介護をされるご家族の方としては、転院先探しに非常に悩まれることでしょうし、介護施設探し、または在宅介護への移行などでは、ご家族の方々で続けられるのか、費用面の問題はどうなるだろうかということで悩まれるでしょう。肉体的、精神的、経済的な側面からの問題に直面し、途方に暮れてしまわれている方もいらっしゃるかと存じます。

 

当事務所と致しましては、そのような方々を少しでもサポートすることができればと考えておりますので、お困りのことがございましたら是非ご相談ください

 

 
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