高次脳機能障害

 

はじめに

交通事故で頭部に外傷を負い、直後意識障害が発生した被害者の方は、高次脳機能障害を 負ってしまった可能性があります。
そのような被害者の方、もしくはご家族の方は、早期に、的確な専門医にかかりつつ弁護士にご相談されることをお勧めします。

また、ご家族から見て、交通事故後、被害者の方に当初意識障害が発生し、以下のような人格変化が生じている場合は、高次脳機能障害が発生している可能性が疑われますので、注意が必要です

 

事故の前後で、人が変わってしまった?

家族が交通事故による頭部外傷を負ったものの、無事退院し、身体の傷も癒えはじめ、やっと普段の生活に戻り始めてきたと思っていたが・・・
事故前にはなかった、以下のような言動が見られるようになってしまった・・・
〇1、2時間前の出来事をすっかり忘れてしまう
〇エネルギッシュさが無くなり、全体的にやる気がなくなった。疲れっぽくなった感じがある。
〇以前は物事をテキパキとこなしていたのに、段取りが悪くなった。
〇ささいなことに拘ったり、怒りっぽくなったりした。以前より子供っぽく、幼稚になった感じがある。
〇職場復帰後、職場の同僚・上司との人間関係が上手くいかないことが多くなった。

〇同僚・上司とよく口論やトラブルになることが多くなった。
上記のような症状が見られる場合、「高次脳機能障害」という後遺障害が残存している可能性が考えられます。

 

高次脳機能障害とは

人間の脳の中で最も発達した部分である大脳の機能には、第一に、目・耳・鼻などで感じた光・音・臭いなどを脳に伝え(知覚機能)、脳からの命令に応じて手足を動かす(運動機能)といった「一次機能」があります。
さらに、大脳の機能には、一次機能からの情報をより高度な命令に変換する「高次脳機能」があります。
高次脳機能は、一次機能と連合して、
①知識・記憶・言語と関連付けて理解したり(認知)、
②そのような知識・記憶を言葉で説明したり(言語)、
③ものごと・出来事を新たに記憶したり(記憶)、
④目的をもって行動に移し(行為・遂行)、
⑤自らの役割に応じて社会的な言動ができる(情動・人格) などの能力があります。

高次脳機能障害に陥ると、上記①~⑤のような能力が欠如し又は減退してしまうのです。

 

例えば、「主婦が家族のために夕飯を作る」という場面を想像してみましょう。
主婦の方は、夕方頃になると、お腹を空かせて帰宅する家族に夕飯を提供するために、誰に指示されることなく、自発的に夕飯の準備をします。
そのため、高次脳機能が十分に働いている主婦の場合、 Ⅰ主婦という自らの社会的役割を当然認識しつつ、夕方の時間帯になったことに気付くと(①・⑤) Ⅱ夕飯の準備をしなければならないことに思い至って、前日に料理番組で観た野菜スープを思い出し、そのための買い物に出かけ(①・③・④) Ⅲメインの野菜スープの他にも、他の料理を作りながら、夕飯全体のメニューを家族の帰宅時間までに完成させ(④) Ⅳ食卓の場で、家族に対し、夕飯のメニューやその料理のポイント・作り方などを説明する(②)といった言動を行うことができます。

 

「やる気がなくなった」だけに見えてしまうことも

しかし、高次脳機能障害に陥ってしまうと、二つ以上のことが同時にできなくなることがあり、例えば、野菜スープを作るためにお湯を沸かしつつ、その間野菜を切り分けておくというような目的に沿った複雑な行動ができなくなってしまいます。
また、そもそも、自らの社会的役割に対する認識が欠如してしまう結果、「家族の夕飯のために料理を作る」という行動を自発的に行うことができなくなってしまうことがあるのです。家族から見れば、このような被害者は「やる気がなくなった」「うつ状態」「子供っぽい」と映ってしまうでしょう。

 

主要症状と具体例

記憶(学習)障害

逆向健忘(過去のエピソードが思い出せない),前向健忘(新たな体験を記憶できない)
・自分のしたことや言ったことを覚えていない
・同じ話を何度もする
・人の名前が覚えられなくなった
・やろうとしたことを忘れてしまう
・者を置いた場所を忘れてします
・過去の出来事が思い出せない

注意(集中力)障害

・聴覚的な選択機能障害:電車内や街頭など騒音のある場所で話が聞き取れない、不必要な音が耳に入ってくる非常に疲れてしまう
・視覚的な選択機能障害:必要なものが探せない、駅前やデパートなど目に入るものが多い場所では、刺激が全て目に入り、非常に疲れてしまう
・注意の変換機能障害:話しかけられてもすぐに返事が出来ない、電車内で友人と会話している際に緊急アナウンスが入っても聞き取りに切替えられない
・注意の分配機能障害:同時並行的な作業(料理、運転など)が難しい
・全般的な注意の持続容量の障害:長い話・長い数字などが聞き取れない、映画を見る・本を読むといった長期間の行為が難しくなる

遂行機能(問題解決、抽象的思考)障害

・簡単な片付けや作業などを効率的に処理できない
・簡単な段取りができない
・自分のできることを把握できず、不可能な計画を実行しようとする
・計画の変更や手順の省略などの状況に応じた対応ができない
・柔軟な思考ができない
・指示されないと行動できない(何をやっていいか分からない)
・考える前に行動してしまう

社会的行動

・意欲・発動生の低下:自発的な行動がなくなった、無気力になった、無為な生活を送るようになった、言われないと動けない
・情動コントロール障害:些細なことで急に怒りを爆発させ怒った後は何事も無かったかのように振る舞う、場にそぐわない泣き笑いがある
・対人関係能力の障害:相手の気持ちや意図を察したり共感したりできない、言外の意味が分からず字句通りに受け取る、相手の反応に構わず話を続ける、会話についていけなくなる
・依存的行動:子どもっぽくなる、人に頼りたがる、口先ばかりで行動が伴わない
・固執性:一つのことに拘り切替えがきかなくなる、臨機応変な行動が苦手になる、優先順位を付けられない、過剰な正義感や正論を振りかざしトラブルに巻き込まれやすくなった、柔軟性が無くなった

 

その他の障害

・気づきの障害(病識欠如):自分に障害があることを理解できない、代償行動(記憶障害を補うためメモを取るなど)の必要性を全く感じていない、障害を指摘されると怒り出すほどに頑なに否定する、実際には不可能なことをやろうとする
・疲れやすい(神経疲労、易疲労性):集中力が持続できない、刺激の多い場所に長時間いることが出来なくなる、事故前より疲れやすくなった
※脳損傷により相当数の脳細胞が破壊されてしまったため、目・耳などから入ってくる大量の情報を処理しきれずに、脳が疲れやすくなると考えられています
・半側空間無視:左側のみ人や物にぶつかる・文章を見落とすなどのように、片側が存在しないかのように認識されない状態
・抑うつ症状:気分が沈み悲観的になりやすい、何もやる気が起きない、一日中横になっている

 

交通事故の経験が少ない弁護士は、見逃してしまうことも

高次脳機能障害は、交通事故を取り扱った経験がある弁護士であっても、後遺障害等級の認定が難しいとされる分野です。
なぜなら、例えば大事故の場合、まずは命が助かって良かったとの思いから、高次脳機能障害による微妙な人格変化が見落とされがちであり、病院における看護のもとでは十分生活ができていたものの、社会復帰してから症状があらわれるというケースが多々見られます。

 

また、画像所見において、脳出血や脳挫傷などのあとの明確な脳損傷が認められない脳室拡大や脳萎縮については、慢性期の脳画像フィルムばかりを丹念に見ても気づけないため、医療現場でも見落とされやすいとされております。

そのため、事故後、早期の段階から、高次脳機能障害の等級認定に関与した経験がある弁護士に相談し、的確な専門医にかかり、検査を受け、後の自賠責保険における後遺障害等級の認定に必要となる継時的な画像撮影、画像所見、医療記録を残していくことがよりお勧めであるといえます。

 

早期の相談と、資料の収集がカギ

これらの障害による支障は、病院における看護のもとでは症状があらわれにくいです。
特に、大事故に遭ったものの命が助かったという場合、病院としても、まずは外傷の治療に専念することとなりますので、見落としがちです。
また、家族も命が助かった安心感から、微妙な変化に気が付きにくいといえます。
ご本人としては、今までできていたことができなくなったということに対する思いはありますが、それが高次脳機能に傷害を負ったことによる影響であるという理解がしがたく、自覚しにくいところです。

 

その結果、肉体が回復し、社会生活へ復帰したところで社会生活上様々な支障が発生します。
このような状況下でご家族がその微妙な変化に気が付いた時に病院を受診しても、受傷当初の所見や検査が不十分な場合、はたして高次脳機能障害か否かという診断が難しく、仮に高次脳機能障害と診断されても、自賠責保険における後遺障害等級の認定審査に耐えられるだけの資料が収集できるか、という問題があります。

 

理解者・助言者の必要性

高次脳機能障害は、治療が1年以上の長期間になることが多く、それと共に様々な社会的・経済的トラブルや悩み事に遭遇します。そのようなトラブル・悩み事だけでなく、上記のようにすっかり「人が変わってしまった」交通事故被害者とどう付き合っていくか、自分はどうすべきかなどのことを、ご本人や家族だけで悩まれ、苦しんでいる方が沢山いらっしゃると思われます。

 

交通事故による高次脳機能障害は、高額の損害賠償を相手方に請求しうる被害です。
しかし、被害の実情に沿った適切かつ十分な損害賠償を獲得するためには、医療・高次脳機能障害に対する社会的支援制度・後遺障害等級認定実務・損害賠償実務などに精通した専門家の助言が必要不可欠と考えられます。
また、弊所に依頼して頂いたある高次脳機能障害の方及びそのご家族が「高次脳機能障害に理解のある相談相手ができただけでも少し肩の荷が下りた。」とおっしゃって下さっているように、高次脳機能障害に悩み・苦しんでいることを相談・共有できる人がいるだけでも、心に余裕が持てるのではないかと考えています。

 

弊所では、交通事故被害者側の弁護士として、高次脳機能障害の被害者様を一人でも多く救済したいと願っており、上記観点からの研鑽を常に行っております。
高次脳機能障害と疑われる以下の症状が思い当たる被害者様又はそのご家族の方は、お気兼ねなく弊所までご相談下さい。弊所は、交通事故被害者の方は、初回相談無料で承っております。

 
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