後部座席でシートベルトを装着せず交通事故に遭うと、賠償金が減額?

平成20年6月の道路交通法改正により、自動車の運転者は、助手席のみならず、後部座席に乗車している同乗者に対して、シートベルトを装着させる義務が課されました(道交法71条の3第2項)。

よって、運転者としては同乗者にシートベルトの装着を促さなければなりませんが、法改正から5年以上が経過した現在、後部座席に座っていてもシートベルトを装着しなければならない、ということは一般常識として浸透してきたと言えます。

そのため、今日の交通事故では、後部座席の同乗者がシートベルトを装着していなかった場合、たとえ運転者からシートベルトを装着するよう促されていなかったとしても、シートベルト不装着を理由として、損害賠償請求額が減額(過失相殺)される傾向にあります。

確かに、シートベルトを装着していないことが直接の交通事故の理由となるわけではないので、
シートベルトを装着していないことだけで被害者の方に過失が認められるわけではありません。

しかし、シートベルトを装着していないことにより怪我が重度になることは多いと言わざるを
得ません。
そのため、被害者自身にも損害を拡大させた( 怪我を重傷化させた )過失があるという理由で
損害賠償額が減額されるのです。

では、シートベルト装着しなかったことを理由に減額(過失相殺)されてしまうとしても、どの程度
減額されているのでしょう。
後部座席に同乗していた交通事故被害者の方について、シートベルトを装着していなかったことが
賠償金額を減額する理由となるか争われた近時の裁判例をみてみましょう。

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【大阪地判平成26年7月25日】

被告(タクシー会社)は、被告車両の後部座席ドア内側に「安全のためにシートベルトをおつけください」と記載されたステッカーを貼付していた。

原告は、子2名と一緒に被告車両の後部座席に乗車していたが、シートベルトは装着しなかった。原告は、タクシー運転手が急ブレーキをかけた原因について事前に認識しておらず、急ブレーキにより大きな衝撃を受け同人の首が前後に大きく揺れ、腕や体を運転席の後ろにぶつけた。原告同様シートベルトを装着していなかった原告の長女は、助手席のヘッドレストに頭をぶつけた。(中略)

他方、運転者には、後部座席に乗車する者についても、シートベルトを装着させる義務が定められている(道路交通法71条の3第2項)。

被告(タクシー会社)が、乗客の目につきやすい箇所にステッカーを貼付することで装着を促したのに対し、原告は、シートベルトを装着しなかった。

上記義務は運転手が負う義務であるが、被告車両がタクシーというサービス業であることからすれば、乗客に対する装着指示の方法にはおのずと限界があるというべきであり、ステッカー貼付による指示も相当な方法とみることができる。他方、原告は事故の約1ヶ月前に運転免許を取得したばかりで後部座席のシートベルト装着義務も理解していたにもかかわらず、シートベルトを装着しなかった。

急ブレーキによりシートベルトを装着していれば、急ブレーキにより腕や体が運転席にぶつかるようなことにはならなかったものと認められ、本件事故による原告の傷害も軽減された可能性が高い。

以上によれば、原告がシートベルトを装着しなかった点について過失相殺をなすべきであり、その相殺の程度として1割を相当と認める。

taxi

シートベルト

 

【東京地判平成25年12月16日】判決文より抜粋

本件事故により2名の同乗者はいずれも受傷しなかったにもかかわらず、原告は、本件事故の衝撃により後部座席を左側から右へ移動し、右半身がドアに打ち付けられて右肩腱板損傷、顔面打撲等の傷害を負ったことからすると、原告がシートベルトを着用していなかったことが原告の傷害の発生ないし拡大に寄与したことは否定できない。

また、後部座席におけるシートベルト着用の義務については、道路交通法上明らかなだけでなく、一般にも広く周知されているところであり、タクシーの乗客である原告も自己の判断においてシートベルトを着用すべきであったというべきである。(中略)

このようなことからすると、原告においても、シートベルトを着用しなかったことについて落ち度があったことは否定できず、過失相殺として、損害の10%を控除するのが相当である。

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carview

 

【釧路地判平成26年3月17日】判決文より抜粋

被告が、原告を被告タクシーの乗客として後部座席に乗車させて本件事故現場付近を走行中、被告がてんかんの発作により意識を失い、被告タクシーが暴走し、被告タクシーの進行方向左側にある建物の外壁に衝突した。
本件事故当時、原告はシートベルトを装着していなかった。(中略)本件事故態様や原告甲野の傷害内容からすれば、シートベルト不装着により原告の傷害結果に影響があったことは否定できないといえるし、本件事故当時には、運転者を名宛人とするものではあるものの、後部座席におけるシートベルトの着用も義務化されており(道路交通法71条の3第2項)、同乗者としても自らの生命・身体を保護するためシートベルトを装着すべきであると考えられるから、本件においては、原告によるシートベルト不装着の事実を過失と見て過失相殺すべきであり、その過失割合としては、原告が客として被告タクシーに乗車していたことや、同人が乗車していたのが後部座席であったことなどの事情を考慮して5%とするのが相当である。
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【名古屋地判平成24年11月27日】判決文より抜粋

本件事故は、信号機による、交通整理の行われている交差点に、対面信号の青色表示に従い直進進入した原告車に対面信号の赤色表示を看過して直進進入した被告車が衝突した事故であり、本件事故は被告の一方的過失により発生したものといえる。(中略)

原告車左側面後部に被告車両部が衝突した本件衝突、原告車右側面後部に訴外車前部が衝突した第2衝突による衝撃等により、原告車は右後部ウインドガラスが破損し、ガラスの欠損した後部右窓から亡花子、原告夏子の順に車外に放出され、地面に衝突し、また、原告車が被さる等して、亡花子及び原告夏子が負傷した・・・(中略)

シートベルトの構造、性能に鑑みれば、原告車にジュニアシートが設置され、亡A及び原告Bがシートベルトを着用していた場合、体感する衝突の衝撃は車体変形により減衰され、原告車が横転して車外放出を回避できた可能性は高い。

そうすると、亡A及び原告Bがジュニアシートないしシートベルトを着用していなかったことにより本件損害が拡大したと認めるのが相当であり、ジュニアシートの設置が義務付けられていること及び本件事故日以前である平成20年6月1日に後部座席シートベルトの着用が義務付けられたこと(道路交通法71条の3第2項、第3項)をも併せて鑑みれば、同人らと身分上、生活上一体の関係にある母で、運転者の原告春子の過失として亡A及び原告Bの損害につき過失相殺を適用せざるを得ない。

しかしながら、後部座席付近に2度にわたり強い衝撃が加わっていること等からすれば、亡Aや原告Bがシートベルトをしていたとしても、相当程度の負傷は免れ得なかったといえることに加えて、本件事故が赤色信号無視による被告の一方的過失に基づく事故態様であること、亡Aが死亡していることなどを考慮して、その過失は、5%を認めるのが相当である。

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injury

 

最近の裁判例における判断内容は以上のとおりです。

交通事故が発生し、被害者の方の治療が終わり、交渉が不調となって裁判が始まり、裁判が終わるまでとなると、ある程度長い時間が必要です。
現時点においても、平成20年6月の法改正後に起きた後部座席に座っていた被害者の交通事故で、判決で裁判が終わるというところまで進んだ事件は件数自体があまり多くありません。
そのため、一概には言えませんが、一般には10%の減額、加害者側の過失が大きいような事故態様の場合には5%の減額という裁判傾向が見て取れます。
同乗者として車に乗る場合は、運転者のためにも、自分のためにも、シートベルトを装着するべきであるということを心がけるようにしなければならないといえるでしょう。

シートベルトをしていなかった状態(不装着、未装着)で交通事故の被害に遭われお悩みの方がおられましたら、まずはご相談ください。初回相談料は無料です。

 
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